人的プッシュ販売以外に、定額料金での音声通話かけ放題やカップル間でのかけ放題など、MNP導入前から各携帯電話事業者が多様な料金プランを投入したことによって、実質的に料金が値下げされたこと、およびMNPに合わせて多様なサービスが投入されたことによって市場が刺激されたことがあげられる。 日本でも2006年秋にMNPが導入されるが、韓国の例を教訓として、過度な販売競争が行われることがないことを期待したい。
2)「TBBg戦略」のインパクトと狙い。 韓国情報通信部は、2004年5月に、新IT戦略「IT839戦略」を打ち出した。

「8大サービス」を提供するために「3大インフラ」を構築し、「9大成長エンジン」を発展させる好循環を生み出すための国家戦略である。 この8大サービスの中に、W-CNMA、WiBRo、NMBという3つのサービスが含まれており、これらのサービスが、韓国の携帯電話事業者に大きな影響を及ぼそうとしている。
韓国の携帯電話事業者は、3社ともCNMA2000系のインフラを構築し、サービスを提供してきた。 日本ではAが同じ規格を採用している。
ところが、現在SKTとKTFが、W-CNMAのネットワークを構築し、サービスを提供する準備を進めている。 日本でたとえるならば、AがこれからW-CNMA網を整備するようなものである。
この背景には、韓国情報通信部のIMT一2000(第3世代携帯電話)におけるデファクトスタンダードはCNMA2000ではなくW-CNMAになるという判断と、CNMA2000はクアルコムのロードマップに過度に依存しているため、その呪縛から逃れたいという意思があったと考えられる。 決して、事業者自らが選択したものではないと推察される。
日本でCNMA2000を採用しているAが、W-CNMAを採用しているNNに対して、互角以上の戦いを行っている状況を見ると、実に思い切った判断だといえる。 SKTとKTFには、当面、2つのネットワークの運用コストが重くのしかかる。
WiBRoは、無線におけるブロードバンドサービスの提供を目指し、ETRI(韓国電子通信研究院)、端末メーカー、通信事業者が共同で開発した無線インターネットの規格である。 下り最大15MbPsという高速性のみならず、高速移動時(60km/h以上)におけるハンドオーバー(基地局間の接続切り替え)機能も有しており、無線LANと携帯電話の中間に位置づけられるサービスである。
周波数帯域は2.3GHz帯が割り当てられており、先頃、国際標準IEEE802.16Eの規格として認定された。 このWiBRoサービスの2006年4月のサービス開始に向け、KTが現在ネットワークを整備中であり、90%以上の人口カバー率を確保しようとしている。
端末は、ノートPC向けのカード型端末のみならず、携帯電話とのデュアルモード端末が発売される予定である。 これは日本でたとえるなら、N東西がWiMAXを面的に整備し、Nの携帯電話との“ワンフォン”を出すようなものである。
WiBRoの免許は、KT以外にハナロ通信とSKTにも付与されたが、ハナロ通信はWiBRoの収益性が不透明という理由から事業化を放棄した。 SKTは都市部で周波数帯域が緊迫し始めた携帯電話の補完としての利用を想定しているようである。
このKTが推進するWiBRoは、既存携帯電話事業者のデータトラフイックに影響を及ぼす可能性が指摘されている。 これに対して、SKTとKTFは、HSNPA(W-CNMAの高速版)の導入で対抗しようとしている。
WiBRoが立ち上がるかどうかは、携帯電話のシングルモード端末と遜色ない大きさのデュアルモード端末が出荷されるか、また、その対応端末の機種がどの程度増えるかにかかっている。 NMBは、モバイル向けのデジタル放送のことであり、衛星NMBと地上波NMBの2つの種類がある。

日本でいうと、前者が「モバHO!」、後者が「ワンセグ」に相当する。 衛星NMBは、2005年5月からSKT、KTF、GTの3社がサービスを開始し、2005年10月末現在、20万契約に達している。
事業主体はSKTが中心となって設立したTUメディアであり、携帯電話事業者は、TUメディアから回線を賃借するかたちでサービスを行っている。 月額利用料は1万3000ウォン(約1300円)。
このうち25%が携帯電話事業者の収入となる。 一方、地上波NBMは、地上波テレビ局3社および新規3社が事業者として選定され、現在、2005年末のサービス開始を目途に準備が進められている。
当初、2005年7月にサービスが開始される予定であったが、携帯電話事業者と放送事業者との間での調整に手間取り、サービス開始が遅延している。 その理由は、携帯電話事業者がビジネスモデルを描けないことにある。
地上波NMBは、基本的に広告モデルによる無料放送であり、衛星NMBのような利用料収入が入らない上、携帯電話のエンターテインメント系や映像系のコンテンツに大きなダメージを与えることが予想されるためである。 このように、W-CNMA、WiBRo、地上波NMBは、いずれも携帯電話事業者にとって、機会というよりも脅威という側面が強い。

このような政策を推進する、韓国のIT戦略の狙いはどこにあるのだろうか。 それは、S電子やG電子といった、韓国メーカーの国際競争力強化のためのテストベッド、およびテストマーケティングの場として、韓国市場をとらえているためである。
ドメスティックな携帯電話事業者の競争力よりも、グローバルなメーカーが躍進する舞台を韓に作り上げることが、益にかなうのである。 W-CNMA、WiBRo、NMBなどの多様なネットワークにアクセスできる環境を早期に実現し、そこでS電子やG電子が対応端末や新サービスを次々と投入し、そのノウハウを海外へ移転する。
ちなみに、S電子の2004年の売上は、韓国GNPの18%、輸出総額の21%を占めている。 このような韓国のIT戦略を日本も真似をすべきだとは思わないし、このような保護主義的な政策が、日本でうまくいくとは思えない。
ただ、少なくとも韓国政府が強い確信を持って、何を捨て何を育てるのか、メリハリの利いた産業政策を行おうとする姿勢については見習うべき点が大いにあるのではなかろうか。 csEモバイルインターネットにおいても日本を凌駕する中国市場。
1)圧倒的な数を誇るB憶うBOO万人の中国携帯電話ユーザー3億7800万人。 2005年9月現在の、中国における携帯電話利用者数である。
中一国でEU諸国の人口の総和に匹敵する人が携帯電話を利用している計算となる。 パーソナル性がきわめて高い携帯電話の市場規模は、各国の例を見ても人口の大きさに正比例する。
総人口が13億といわれる中国には、まだ膨大な規模の市場が眠っている。 中国の携帯電話利用者数が世界一となったのは2002年であり、2005年現在、すでに日本の4倍の規模に達している。
増加のスピードは緩まることなく、2010年には6億5000万人が携帯電話を利用するようになるとNRIは予測している。 そして2005年を境に、もう1つの世界一が生まれようとしている。

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